年間の被曝限度量、引き上げを検討 原子力安全委
原子力安全委員会は5日、放射線量の高い地域の住民の年間被曝(ひばく)限度量について、現在の1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げるべきか検討を始めた。放射線の放出が長引き、「長く生活する観点で考えないといけない」とし、現実路線への見直しを検討する。
会見した代谷誠治委員は「防災対策での退避は通常、短期間を想定している」と指摘。すでに数週間に及ぶ退避や避難の考え方について、政府から見直しを検討するよう相談されていることを明らかにした。 原発から半径30キロ圏外の福島県浪江町の観測地点で放射線量の積算値が上昇している。先月23日から今月3日までの積算値は10.3ミリシーベルトになった。日本では人が年間に受ける被曝限度量は現在、一律1ミリシーベルト。国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告では、緊急事故後の復旧時は1~20ミリシーベルトを目標としている。
2011年4月5日 asahi.com(朝日新聞社)
「長く生活する観点で考え」て、「現実路線」をとると、原子力安全委員会の専門家たちは被曝限度量の引き上げを検討するわけだ。これは、コロンブスの卵だな。
私なんかは常識的な発想にとらわれた素人だから、「長く生活する観点で考え」ると、被曝限度量の引き下げ&避難範囲拡大&作付け禁止範囲拡大、というふうになるものだと考えていた。なぜなら、原爆症認定問題をちらっと見るだけでも、問題の大部分は低線量の被曝者たちだからだ。被曝問題というのは、「ただちに」健康に被害を受けた人たちだけではなく、長い時間をかけてじわじわと放射線量を蓄積した人たちの被害の問題である。だってほら放射線って見えないから。大丈夫大丈夫でやっていると、自分でも気づかないうちに低線量の放射線に曝されて蓄積してしまうのだ。もちろん国はそういう被害を認定しない。それは生活習慣の不摂生じゃないですか、自己責任ですねってことになるだろう。
原子力安全委員会が最大20倍の被曝量をOKにしようと書類を書き換えているのは、今後膨大な被曝者問題が起きることを想定しているからだろう。首都圏も例外ではない。人口規模で考えれば、むしろ首都圏の被曝者問題こそが、今後大きな問題になるだろう。
東京はすでに低線量被曝地帯である。数年か十数年後に、数万人規模の「原爆ぶらぶら病」が再現される。
追記
原稿がなかなか進まないのでDVDを観た。
『仁義なき戦い 広島死闘編』。村岡組山中正治(北大路欣也)と、大友組大友勝利(千葉真一)を描いた回だ。
若いやくざたちは、年寄りにだまされるか年寄りを踏みにじるかして、暴力にあけくれ死んでいく。彼らは広島のほこり立つマーケットで、自覚できない内部被曝にじわじわと体を蝕まれながら、抗争を繰り広げたのだ。映画では明示されることはないが、これは低線量被曝地帯の映画だ。