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2012年11月4日日曜日

国連人権理事会が勧告


 
「福島住民の健康の権利守れ」 国連人権理事会が勧告
 【ジュネーブ=前川浩之】日本の人権政策について、各国が質問や勧告(提案)ができる国連人権理事会の日本審査が終わり、2日、各国による計174の勧告をまとめた報告書が採択された。福島第一原発事故について、住民の健康の権利を擁護するよう求める勧告が盛り込まれた。
 普遍的定期審査(UPR)と呼ばれ、加盟国すべてに回る。日本は2008年以来2回目で、討論には79カ国が参加。法的拘束力はないが、日本は来年3月までに勧告を受け入れるかどうかを報告するよう求められる。
 福島事故をめぐり、オーストリアだけが「福島の住民を放射能の危険から守るためのすべての方策をとる」よう求めた。日本は、11月中に健康の権利に関する国連の特別報告者の調査を受け入れると表明した。
(11月3日 朝日新聞デジタル)

 今次の放射能拡散事件について、国連人権理事会は、住民の健康の権利をまもるよう日本政府に勧告した。政府は今月中に国連の調査を受け入れるとしている。
 これがどんな成果を上げるのかは未知数だが、住民の健康をおびやかす人権侵害事件が起きているということは、もう議論の余地はないだろう。
 この間、「福島の再生なくして日本の再生なし」としてきた復興政策が、重大な人権侵害事件であったことがはっきりする。また、政府の「食べて応援」キャンペーンに加担して、汚染食品を流通させ、生産させ、消費させてきた生活協同組合は、重大な人権侵害行為を行ったのだということがはっきりする。
 自分たちの経済的事情から住民の健康を犠牲にしてきた者を、名指しする段階にはいる。


2012年8月7日火曜日

小麦・大豆警報

関東産の汚染小麦と汚染大豆が、加工食品になって流通している。
加工食品は、複数産地を混ぜることで放射線濃度を操作することができるので、要注意。
この数カ月、部屋にこもって文章書きに没頭していたので、これは完全に出遅れた。

小麦の加工食品では、セシウム134・137合算で7Bq/kg程度のものが発見されている。
これは市民測定所のNaI核種分析機が追える検出限界でギリギリのライン。丁寧に時間をかけて測定しないと、うっかり「不検出」にしてしまうレベルだ。
まずい。
本気で測定しないと、やられる。
麺類、パン、納豆、味噌、醤油には要警戒だ。

2012年7月12日木曜日

カリウムとセシウムは何が違うのか

「放射性カリウム(カリウム40)も放射線を出すのだ」みたいなことをいまだに力説する馬鹿がいるので、一度きちんと書いておかなければならないだろう。放射性カリウムと放射性セシウムは違う。
 何が違うかと言えば、濃縮の度合いが違う。
 核種分析機で食品を測定していればわかることだが、カリウム40の濃度は安定している。どんな食品でもだいたい100Bq/kg台のオーダーである。これに対して、セシウムの濃度は予測できない。1000Bq/kgなんてひどいものが平気で出てくる。

 では、なぜカリウム40の濃度は安定しているのか。
それは、カリウム39とカリウム41という安定カリウムのおかげだ。この二つの安定カリウムで、カリウム全体の99.9%を占めている。放射性のカリウム40は、カリウム全体の0.1%である。この割合は、いつでもどこでもピタリと0.1%というわけではないだろうが、おおむねこの割合になっているだろうということで、あるカリウム肥料のなかの90%が放射性カリウムだったということはないのである。
ということはどういうことかというと、放射性のカリウム40が1あるとき、そこには必ず安定カリウムが999ある、ということである。ある作物に占めるカリウムの空間量が1000あるとして、そのうちの999は安定カリウムによって占められ、放射性カリウムを閉め出しているということだ。つまり放射性カリウムは、かならず999のスペーサーを伴って存在しているということである。
セシウムはこういうわけにはいかない。セシウムがあるところ必ず安定カリウムがあるというわけではない。だから、不耕起栽培(耕さない畑)でカリウム肥料を使用していない畑では、セシウムをブロックするカリウムが足りず、作物への移行係数0.3という恐ろしいことが起きてしまう。いま汚染された農地ではカリウム肥料の投入がなされているだろうが、それは安定カリウムをセシウムのスペーサーにするという操作である。そういう畑で採れた作物がセシウムの移行を抑えることができたとして、ではその裏山のタケノコや山菜が何ベクレルになっているかは予測できない。入会地の裏山にわざわざカリウムを撒いてくれる人などいないだろうから、そこには放射性セシウムがスペーサーのない剥き出しの状態で置かれている。キノコ・タケノコ・山菜は際限なくセシウムを吸収し、ウン千ベクレルという恐ろしい濃縮を遂げるのである。

我々が放射性セシウムを問題にして、放射性カリウムを問題にしないのは、こういう理由があるからだ。こういうことは一度でも核種分析機をいじってみれば直感的にわかることだ。ちょっと本を読んだだけでカリウムカリウム言うのは、まったくの机上の空論である。

2012年6月20日水曜日

豊川(愛知県)の汚染状況

先月16日、愛知県の豊川の三か所から土壌サンプルを採取した。
 一か所は豊川の河口にあたる豊橋市。豊橋排水機場の付近に泥が堆積している部分があったので、その泥を採取。
 二か所目は、隣の豊川市。河口から15kmさかのぼった三上橋の付近で河の砂を採取。
 三か所目はさらに水源にさかのぼって新城市の大原貯水池。貯水池には立ち入ることができないので、貯水池を囲む森林の土壌を採取した。
 豊橋市、豊川市の砂は、いちおう不検出(10Bq/kg未満)。
 新城市の土は、セシウム137が14 Bq/kg、セシウム134が7 Bq/kg検出された。

このまえ出版した『3・12の思想』や、図書新聞5/19号の一面のインタビューでも触れたことだが、セシウム134は重要。比較的短命なセシウム134が検出されたということは、これは東京電力のセシウムである。福島第一原発の放出した放射性物質は、愛知県新城市に到達していることが確認できた。量的には微妙というか、NaI核種分析機の精度で検出するにはギリギリのレベルなわけだが、この森林にある東電製セシウムは、これから時間をかけて河を下り、河口から海に注ぎ、伊勢湾に棲息する魚介類に濃縮することになる。14Bq/kgのセシウム137が、魚の体内でどれぐらい濃縮するのかはわからない。暗中模索だ。

 今後は、釣り師のコイエくんにボートを出してもらい、伊勢湾で魚を釣ろうと思う。コイエくんというのは、この間の沿岸調査をリードしてきた釣り師でありアニメオタクであり介護労働者である。オタクの若者と思想家を自称する中年の二人で、1.5キロの魚を釣り、放射線を測定する。この作業を定期的にやらなくてはならない。

41歳にして初めての釣りである。
思えば遠くへ来たものだ。

2012年5月18日金曜日

表と裏と障害者

食品による内部被曝問題はかなり多くの人々に共有されていると思う。
食品の産地表示もずいぶん細かくなってきているし、なかには産地偽装もあるだろうが、全体に防護対策は取りやすくなっている。粗食にも慣れた。
 しかし防護対策がしやすくなった半面、防護をめぐる議論が表面にあらわれにくくなってもいる。多くの人が放射能を忘れたふりをする。この問題から自由であるふりをする。そうして、公然とではなく隠然と、公的ではなく私的に、防護対策はすすんでいくわけだ。

 おそらくここで問題にされるべきは、障害者の防護対策である。
発達障害やアスペルガ―症候群など言語能力の劣る人々は、表と裏のダブルスタンダードを立体的に読み取ることができない。政府が「安全です」と言うとき、それを平板に額面通り受け取り信じている人がいる。「専門家を信じろ」という権威主義的な人格も、障害者ではないかもしれないが、ある意味でそういう弱者のグループである(権威主義者はどんどん被曝して死ねばいいという意見もあるが)。
社会の表面では、社会、国民、絆、といった公的なものが美化されていて、地下では私的な防護対策が進行する。実際に多くの健常者たちはしたたかに自分の身を護っているのだが、表向きは放射能など知らないふりをする。
こうした嘘によって傷つくのは、嘘をついた者たちの精神だ。
社会はもう壊れていて、現実は私的なものに委ねられているのだから、カッコイイ嘘も、自由なふりも、やめるべきだ。

2012年4月9日月曜日

測定行為と対象の問題

愛知県岡崎市の保育園で使用されていた干し椎茸から、1400Bq/kgのセシウムが検出された。
 これは東海ネットの市民放射能測定センターで測定したものだが、報道では保健所で検査したと報じられているので、たぶん我々のあとにもう一度保健所で測定したのだと思う。2度チェックしたのだから間違いはないだろう。

 で、問題は1400Bq/kgという数字である。これをどう解釈するかだ。
 実際には1㎏の椎茸を一人の子どもが食べるわけではない。
 1㎏の椎茸を250人の児童が食べたとして、1400Bqを250人で割って、ひとり5.6Bq程度だ、という考え方がある。
こういう言い分は一見するとなんだかもっともらしいのだが、実は気休めにすぎない。
なぜなら、このセシウムは、1kgの椎茸にまんべんなく均一に付着しているわけではないからだ。とうぜんムラがある。
椎茸のある断片4グラムは0.2Bqで、ある断片4グラムは20Bqみたいなことは、充分ありうる話だ。
単純な割り算をやって「これで約5ベクレルぐらい摂取かな」なんて考えていたら大間違い、それは放射能をなめすぎだ。

 さらに測定者として問題にすべきなのは、いま我々の入手できる測定機材では、一人の児童が摂取する4グラムという小さな分量を測定できないことだ。干しシイタケなら300グラム前後、水に戻した状態なら900グラム前後、そういう大きな分量で測定しなくてはならない。このひと固まりの中に、どのような濃淡があって、そのムラの分布がどうなっているのか、そのばらつきの幅の上限はどこまでになるのか、現在の測定技術では把握しきれない。
 把握しきれないにもかかわらず、我々は1キログラム「あたり」という測定結果を出すのである。我々の測定行為が、キログラム「あたり」なんて言い方をしてしまうものだから、「ではグラムあたりではこうですね」というミスリードを誘発してしまう。「あたり」というのは本当はとても便宜的な表現にすぎないのに。

 この問題は、ミクロな次元だけでなく、マクロな次元での汚染調査でも共通した問題である。
 ここでいま悩んでいる。考えどころだ。
 単純な線形モデルが通用しないなかで、当面はとにかく椎茸を避けるしかない。

追記
 ちょっと説明不足の感があるのでもう少し書くと、「1400Bq/kg」という数値もそれほど信用できるものではない。なぜなら、一つのロットに含まれるセシウムは均一ではなく、ムラがあるからだ。
 たとえば段ボール一箱に20袋の干しシイタケがあったとして、これらがすべて同一の濃度であることはありえない。すべての袋の濃度を均一にしろという方が無理。だから、濃度の高い袋から低い袋まで、20種類の椎茸袋があるということになる。ここから、乾燥状態なら6~7袋、水に戻すなら3~4袋を取り出して、サンプルをつくるのである。こうしてつくられた試料サンプルについて、その数値が高いとか低いとか漠然と言うことはできる。しかし、1400という数値自体は、実は根拠が薄弱なのだ。この椎茸20袋のなかには、1400Bq/kgを超過するものが必ず存在している。そこにある最大の濃度が、どれぐらいなのかはわからない。推測することも難しい。
 問題は試料サンプルをつくるという行為が、結果を大きく左右してしまうことだ。サンプル作成のプロセスは必然的に、選別と希釈のプロセスを含んでいて、最も危険な汚染濃度を隠してしまう働きをする。そして、ある兆候を示しているにすぎない漠然とした数値が、なにか再現性を備えた不動の数値であるかのようにみなされてしまう。本当は試料の数値に再現性はない。さらに問題なのは、「基準値」というものを設定してしまうことで、サンプル作成が結果を左右するような事態が生まれてしまっているということだ。
 というわけで、我々測定者は、「測定という行為自体が結果の数値をつくりだしている」という、ちょっとパラドキシカルなプロセスに投げ込まれるわけである。
これはまあ、ある意味おもしろい話なんだけど、現場は悩むところだ。

2012年4月3日火曜日

察しろよ

一般的に言って、男は幼稚だと思う。本当に物事の道理をわかっていない、ペラい連中だ。しかし幼稚な者を放置していては事態が前に進まないので、もう一度阿呆な男に再考を促したい。

 放射性物質による健康被害は、ガンや白血病の発症率ではない。我々が問題にしているのは心筋梗塞でもなければ免疫不全ですらない。問題の中心は、それらとは別の健康被害である。
 我々がどのような健康被害を想定しているのかは、書かない。それをおおっぴらに書いてしまうと、いま我々が必死で護ろうとしているものが毀損されてしまうからである。 
 私は生命が無条件にあることを望んでいる。そのことが当人にすら全く意識されないでいる状態を幸福だと思う。だから、乱暴な言葉づかいでこの問題を口にしたくない。問題をはっきりと提起しなければならないが、それを提起する言葉が問題を修復不可能にしてしまうことが明白なので、口にできないのである。そして誰もあまり口にはしないが、いま給食センターに猛抗議をしている人々は皆はっきりと認識している問題がある。
それが放射能問題の中心である。

この問題の深刻さに比べれば、人間が生きるか死ぬかなんてまったく瑣末なことだ。ガンになる、免疫機能がおちる、それはそれで問題だが、我々が真に怖れているのはそういう健康雑誌のようなレベルの話ではない。阿呆なじじい例えば小出裕章などが考えている「健康被害」と、我々が考えている健康被害とは、まったく次元が違うのである。
放射能問題の本質を、もういちど深く再考してほしい。

2012年3月25日日曜日

ガレキ問題の射程

今日は、「放射能防御プロジェクト・中部」の学習会に行った。
 これまで東海地域でガレキ問題に取り組んできた人たちに、いま何が問題なのかを聞くことができて、すごく勉強になった。

 愛知県の大村知事は、碧南市の処分場建設計画を変更し、知多市の埋め立て地を利用すると発表した。知多市に整備されている未利用の埋め立て地をつかって、震災ガレキの仮置き場・焼却施設・最終処分場をつくるのだという。
 この問題の謎は、費用である。あまりにも費用がかかりすぎることだ。たかだか50万トンのガレキを受け容れるために、400億円ものカネをかけて焼却施設を新設するだろうか。いまの政府がいくら「絆」が大好きだといっても、そんな道徳のために財務省がカネを出すだろうか。
 ということから考えて、問題はどうやら震災ガレキだけではない。ガレキ処分後の施設転用を考えているのではないかと思えてくる。

 問題をもう少し俯瞰してみれば、低レベル放射性廃棄物の処分問題は、震災ガレキだけでは終わらない。これからの国の施策ではさまざまな低レベル放射性廃棄物が出てくるし、最終的には原発の廃炉という問題がある。原子力産業のバックエンドは、長期間にわたって放射性廃棄物を生み出し続けるのである。その処理のための費用と労力をいかに最小限に圧縮するかということを、国も電力会社も銀行も考えているはずだ。だからこそ大村知事は、処理施設設置の「特区」を求めているのだろう。環境アセスメントもなにもなしくずしにして強行してくるはずだ。
 絆だのなんだのというきれいごとではない。
 奴らのカネのために、我々の漁場と海水浴場は汚染されるのだ。

2012年3月22日木曜日

海の調査へ

今日は愛知県の知多半島に行く。
 常滑市在住の釣り師の青年が、海洋の汚染調査をやりたいということで、彼に同行して泥とアサリを採りに行く。
 大気中を拡散したり食品流通で二次拡散した放射性物質は、川や下水処理場を通って最終的には海に流れ着く。海に堆積した放射性物質は、海草や貝類、海底魚の体内にとりこまれて生物濃縮をする。いまはまだたいした汚染はないだろうが、数年後にはえっと思うような汚染魚が登場することになるだろう。これから何年もかけて長期的にモニタリングしていかなくてはならない。市民放射能測定センターの所長がゴーサインを出してくれたので、これは測定センターの自主調査として継続的にやることになる。これからちょくちょく海に行って、泥をとったり船で魚を釣ったりすることになりそうだ。

 今日は知多半島の西側にある伊勢湾と、東側の三河湾に行く。
 数日前に愛知県知事は、震災ガレキの処分場を碧南市につくるという計画を明らかにしたが、碧南市の建設予定地も見てこようと思う。立ち入りができれば、建設前の泥を採取しておきたい。

2012年3月8日木曜日

シーベルトについて

放射性物質による汚染を測るとき、いまは二つの単位が使われている。
 ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)だ。人体への影響を測るシーベルト(Sv)を別の単位として数えれば、正確には三つの単位があることになる。
 いま食品や土壌の測定はベクレル(Bq/kg)という単位で表現し、空間線量や被曝線量はシーベルト(Sv/h)という単位で表現している。

 しかし考えれば考えるほど、シーベルトというのは使えない単位だ。これは何かというとつまるところ熱量である。ジュールとかカロリーみたいなものだ。α線、β線、γ線、X線という種々の放射線を、全部ジュール換算にして表現するみたいな、非常に大雑把な話だ。放射線の研究というのがもともと兵器開発を中心にしているものだから、人間や鉄材をどれだけ焼くことができるかってことなんだろうが、まあ使えない。
 たとえば薬学の研究者が毒物の強さを表現するときに、熱量で表現したらおかしいだろう。このトリカブトの毒は0.001カロリーまでは健康に被害はない、とか。おいおいカロリーかよ、と。そこはグラムだろ、と。もうマンガだ。

 放射線による健康被害というのは、こういうマンガのような次元で議論されている。
 冗談ではない。
 怒りが抑えられない。

2012年2月17日金曜日

ガレキを燃やすな

静岡県島田市の市長が、震災ガレキを燃やそうとしている。ガレキ焼却に反対する市民が島田市に集結している。
問題にされているのは2点。

1、被災地からガレキを移送すること
2、ガレキを燃やすこと

 問題の中心は、震災ガレキを燃やすことだ。ガレキ焼却とは、低レベル放射性廃棄物の焼却濃縮である。原発のなかでは、汚染された衣服やウエスを焼却して分量を圧縮する作業が行われている。こういう作業のもっと大規模なものを一般のごみ焼却場でやらせようというのだ。これは市民が反対しないほうがおかしい。
環境省と市長は、とにかく被災地からガレキを動かしたいと言う。であれば、焼却ではない方法を考えるべきだ。いつまでも焼却にこだわっているからガレキが動かせないのだ。これは痛みを分かち合うとか分かち合わないとかいう問題ではない。これ以上誰も被曝させてはいけない。現在の技術水準を考慮すれば、どこの焼却場であれ、ガレキを燃やしてはいけない。
 どうせ結末は見えているのだから言うが、震災ガレキは福島県双葉郡に移送して、積み上げて、飛散防止の塗料をかけておくしかない。すでに双葉郡の一部自治体はその意向を示しつつある。

2012年1月17日火曜日

国の言う「空間線量」はでたらめです

空間線量の計測・評価の方法について、文部科学省に電話で質問をした。
確認したかったのは、外部被曝を評価する際のベータ線のとりあつかいの問題である。
国が定める測定のガイドラインでは、空間線量の測定はシンチレーションサーベイメータで行うこととされている。現実に国・自治体が実施しているモニタリングは、すべてシンチレーションサーベイメータで行われ、マイクロシーベルト毎時(μSV/h)という単位で発表されている。
シンチレーションサーベイメータは、ヨウ化ナトリウム等の検出器によってガンマ線をカウントし、そのCPM(カウント・パー・ミニット)に係数をかけて、シーベルトにしている。
 これに対して、一般に普及している空間線量計は、GM管(ガイガー・ミュラー管)が使われていて、これはベータ線とガンマ線をカウントして、そのCPMに係数をかけてシーベルトにしている。
 拡散している放射性物質には、アルファ線を出す核種、ベータ線を出す核種、ガンマ線を出す核種があって、代表的なヨウ素131・セシウム134・セシウム137という核種は、いずれもベータ崩壊をしてベータ線を出す核種である。ガンマ線はそのついでというか、ベータ崩壊に伴ってでてくるものだ。セシウムが崩壊すると、ベータ線とガンマ線の二種の放射線が撃ち出される。だから、ロシアやウクライナから輸入された空間線量計は、ベータ線とガンマ線を両方カウントする仕様になっているわけだ。
 簡単に整理すると、シンチレーション式はガンマ線のみ、GM管式はベータ+ガンマをカウントしている。当然、シンチ式がだす数値は、GM管式の数値よりも少ないものになる。
 では国・自治体は、シンチレーション式で拾えなかったベータ線の被曝線量について、どういう評価をしているのか。シンチで拾ったガンマ線シーベルトの値から、ベータ線の分を推定して割り増ししているのか。あるいは、土壌・空間のベクレルの値から推定して、ベータ線による被曝線量を追加しているのか。
 文部科学省の回答は、「ベータ線の分は勘定していない」だった。
国・自治体が発表している「空間線量」とは、人がある空間に立った時に、ガンマ線を浴びる量だけを評価したものだというのだ。では、人が土に触れたり、衣服に放射性物質が付着した状態で浴びてしまうベータ線の影響は勘定していないのかと聞くと、「そういうことは無いものとして考えている」というのだ。

 これは素人でも分かることだが、まったく実態にあっていない。放射性物質は、屋外にも屋内にもごろごろブツが転がっていて、肌の表面や衣服に付着してしまっている。これはもうどうあがいてもベータ線を浴びてしまう。しかし国・自治体が言う「空間線量」は人が放射性物質に触れないという前提での線量なのだから、もしこれを実現しようとするならば、まず体をよく洗い、汚染されていない衣服を着たうえで、ベータ線を遮蔽するために厚さ10㎜程度のアルミ板で全身を鎧のようにくるみ、顔は全面マスクで覆っておかなくてはならない。地下足袋なんかもう絶対禁止で、靴底に20㎜ぐらいのアルミ板を貼ってベータ線を遮蔽しなくてはならない。この状態にしてようやく、国の言う「空間線量」になるわけだ。

では、ICRPが定める追加被曝線量の許容量というのは、どうやって計算するのか、国は、このガンマ線評価のみの特殊な「空間線量」を積算して、年間被曝線量を評価していくのかと聞くと、「そうではありません」と言う。「追加被曝の許容量は、ベータもガンマも、外部も内部も、すべてひっくるめて合算した線量です」と。じゃあこの発表されている「空間線量」は被曝線量の評価と関係ないんですね、と聞くと、「そうですね」と。
なんなんだよ。
外部被曝の評価方法も定まらず、年間許容量とも関係のない意味不明な数値で、退避とか除染とか線引きしてるのか。
馬鹿か。馬鹿なのか。



おまけ(クリスバズビーが原子力スターリニズムを批判)

2012年1月12日木曜日

たかが米のために人間を被曝させるな

福島県が馬鹿なことを言いだした。まず1月4日の報道。

 福島県の一部で収穫されたコメ(玄米)から国の暫定規制値(1キロ・グラムあたり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された問題で、県は2012年のコメの作付けの際に、カリウム肥料を多く与えるよう農家に、技術指導を行うことを決めた。
 カリウム肥料にはイネがセシウムを吸収しにくくする働きがあるという。
 同県では福島、伊達、二本松各市の計9地区31戸(昨年12月30日現在)で作られたコメから規制値超の放射性セシウムが検出されている。県と農林水産省が水田などを調べたところ、コメの放射性セシウム濃度が高いほど、土壌のカリウム濃度が低い傾向があることがわかった。
 財団法人・環境科学技術研究所(青森県六ヶ所村)の大桃洋一郎相談役(環境放射生態学)によると、カリウムは窒素、リンとともに植物の3大栄養素で、化学的性質が似ているセシウムより吸収されやすい。カリウムが欠乏した土壌では、セシウムを吸収しやすくなる。
(2012年1月4日 読売新聞)

 これは昨年の『atプラス』誌上でも指摘した問題だが、再度批判し、注意喚起しておきたい。
問題はおおきく2点ある。

1、カリウム投与によるセシウム移行低減は、商品流通の正常化を優先して、生産現場の土壌汚染を放置し、農家・農業労働者を被曝させる政策である。県は生産者を防護する責務を放棄している。

2、セシウム移行低減は、食品測定の指標となるセシウムを「不検出」にする一方で、汚染の全体(ストロンチウム等の核種の有無)を隠すはたらきをする。これは汚染作物のロンダリングであり、農産物に対する消費者の不信はさらに高まることになる。

 福島県は、作物が商品として流通できるかどうかだけを考えている。それは、大規模な土壌汚染問題に正面から向き合わない、ごまかしの「対策」だ。
 こうした県側の動きに対して、福島の農業団体は対抗的な方針を出しつつある。

 福島県のコメから放射性セシウムが検出された問題を受け、JAグループ福島は、県内のコメに少しでもセシウムが検出された場合、当該農家に今春の作付け中止を要請する検討を始めた。

 JA側は作付けを見送った農家への補償を国に求める考えだが、国は暫定規制値(1キロ・グラム当たり500ベクレル)を超えた地区に限って作付けを制限する方針で、補償が実現するかどうかは不透明だ。

 同県では昨年11月末までに、福島市や二本松市など29市町村で収穫されたコメからセシウムが検出。このため、農林水産省と県が同月から、29市町村の全農家約2万5000戸の調査を始めており、昨年末時点で4840戸の農家のコメ5291点のうち、約20%の1094点からセシウムが検出された。
(2012年1月10日 読売新聞)

 福島第1原発事故を受け、JA新ふくしま(福島市)は11日、土壌の放射性物質濃度を調べる新型測定器の試験を市内のブドウ農園で公開した。新型の測定器は小型で持ち運べるのが特徴。農地の汚染状況を迅速に調べることができると期待されている。
 測定器はベラルーシ製。重さ約5キロで、調べたい場所に置くと、その場の土壌に含まれるセシウムなど代表的な放射性物質の濃度を表示する。従来の機器は、精度は高いが重さが100キロを超す固定式で、土壌の汚染濃度を調べる際には、現場から土を持ち帰って乾燥させるなどの手間がかかった。
 JA新ふくしまは「消費者の信頼回復を進める上でも、農地を広く調べる態勢をつくりたい」としている。
(2012年1月11日 共同通信)

 これが正しい。土壌を調べることが唯一の解だ。
 福島県はさっさと土壌を調べて、必要な退避措置を講じるべきだ。経済のために人間を被曝させるな。

2011年12月12日月曜日

がんばれグリーンピース

ウクライナ放射線医学研究センターのステパノワ博士の記者会見があった。
会見内容を見てもらえばわかると思うが、こんなやつ呼んでどうすんだグリーンピース。
これ、ウクライナの山下俊一じゃないか。びっくりした。会場もどんびきだよ。
グリーンピース・ジャパンには汚染調査など全般的にお世話になっているから言いにくいが、今回は失敗だ。

2011年12月11日日曜日

明治「ステップ」の問題

乳児向けの粉ミルクから放射性セシウムが30.8Bq/kg検出された。

気になるポイントは2つ。

1、明治は問題になってから製品の検査結果を発表したが、検出限界5Bq/kgですべて不検出としている。
http://www.meiji.co.jp/notice/2011/detail/20111206_fig.html
 ところが、問題になる以前の検査結果(4月28日~)については、検出限界が何ベクレルなのか明記されていない。
http://www.meiji.co.jp/notice/2011/detail/20111206_fig5.html
 これはおそらくずっと荒い検査だったのだと思われる。粉ミルクは比重が小さく軽いので、10分や20分では5Bq/kgまで検出限界を下げることができない。50Bq/kgや100Bq/kgぐらいまでしか確認しなかったのではないか。

2、生産された粉ミルクはいつごろ出荷されて、最短で何日後に消費された可能性があるか。明治は春日部工場の外気から放射性物質が混入したとしているが、そうであれば、もっとも警戒するべきはセシウムではなくヨウ素131である。ヨウ素131の半減期は8日間、30日程度でほぼ消失するとされている。ヨウ素131の入った粉ミルクは、何月何日に出荷されたのか。

2011年11月25日金曜日

セシウム134の意味

木下黄太氏のブログ(11/24)で、興味深いテーマが論じられている。

「いったい、どのくらいの土壌汚染から凌げなくなると考えるのか」
http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927

 これは悩みどころだ。愛知県東部や長野県はフォールアウトによる土壌汚染が確認できるのだが、しかしこのレベルなら除染でなんとかなりそうな気もするし、実際どうなのか。ここでは木下氏は100Bq/kgを境にして考えているが、この線が妥当なのかどうかは、私にはまだわからない。

 土壌の核種分析をやっていて最近ようやくわかってきたのは、セシウム134がひとつの目安になるだろうということだ。
 いま私たちが計測しているセシウムは2種類あって、セシウム137と、セシウム134がある。セシウム137は半減期が30年、セシウム134は半減期が2年である。
 で、半減期30年のセシウム137は、東電事件以前の大気圏核実験由来のものが土壌に残っていたりする。先日おくられてきた岐阜県の土壌からは、セシウム137が約8Bq/kg検出され、セシウム134がまったく確認できなかった。愛知県や岐阜県にはこういうパターンがあって、このセシウムは東電事件以前のブツだなあと判断している。
 東電事件の影響を考えるとき、土壌にセシウム134があるかないかは判断の指標になる。あと4~5年はこの方法で公害の証拠を記録することができるだろう。

 ということは逆に言えば、私たちはあと4~5年の間に土壌を調べ尽くさなくてはならない。セシウム134がなくなってしまう前に、土壌検査を終えておかなければならない。
 のこされた時間は意外に少ない。

2011年11月14日月曜日

市民放射能測定センター

Cラボ(市民放射能測定センター)での測定結果が公表された。


8月 http://tokainet.wordpress.com/hsc/re/201108-2/
9月 http://tokainet.wordpress.com/hsc/re/201109-2/
10月 http://tokainet.wordpress.com/hsc/re/201110-2/
11月 http://tokainet.wordpress.com/hsc/re/201111-2/

 これでようやく態勢が整った。

 注目のポイントは、測定時間。
 自慢じゃないが、いや、これは自慢なのだが、NAIで6時間(360分)も時間をかけて念入りに測定しているのは、全国を探してもそうはないと思う。検出限界5ベクレルまで測ってくれと言われたら、本気でやる。もう電源はいれっぱなし。忙しいときは、夜中に起きて車で測定所に行き、検体を入れ替えて、帰って寝るという、つきっきり状態である。おそらく業者ではできない、頭に血が上ったボランティアにしかできない力業だ。
 どうだ、すごいだろう。
 東京電力は首を洗って待て。