名古屋で開設される「市民放射能測定センター」で、測定ボランティアの養成講座を受けてきた。
ここで導入されている測定機はNaIという方式で、ゲルマニウム半導体式と比べると厳密さで劣るが、計測値をノートパソコンで自動計算してパッパと出してくれるので、われわれ素人にも扱いやすい。10分間の計測で30ベクレル、90分かければ10ベクレル(核種ごとの検出限界)まで計測できるということなので、大量の品目を短時間でおおまかに見ていくのに適している。
講座の実習では、野菜をフードプロセッサーで粉々にして、試料のケースにぎゅうぎゅう詰めてという作業を教わったのだが、これがけっこう難しい。ケースの容積にみっちり詰めるといっても、これはちょっと考えこむ作業だ。
牛乳などの液体はそのまんまでいいのだが、茶葉なんかはどうするのかという問題がある。茶葉そのままだとどうしても空気が入って密度が下がり、粉末にしてぎゅう詰めした場合よりも2割ぐらい数値が違ってしまう。しかしこれはまあ粉砕すればよいのだから、まだ解決できる。
問題は野菜だ。私が実習で与えられた課題はズッキーニだったのだが、こういうウリっぽい野菜は粉砕すると水分が大量に出てしまう。そうなるとどうしても水分を絞りたくなる。水分を絞っていくと、おそらく数値は上がる。これは静岡県産のお茶が検査されたときに、生の茶葉と乾燥させた荒茶とで数値が大きく変わってしまったことで知られている問題だ。私としては、放射性物質があるかないかをとことん知りたいから、できるだけ水分を絞って密度の高い状態にして測りたい。しかし、実際にズッキーニをカラカラにして食べる人はいないわけで、水分を絞る作業に意味があるのかという疑問もある。ここでいまちょっと悩んでいる。
水分の問題は、土壌調査にも関わってくる。
土壌調査では、地表面の土を掃き集めるか、地中まで掘ってサンプルにするかで、数値が大きく変わる。これは地表面に放射性物質が多く降り積もっているためなのだが、これに加えて、地中まで掘ってしまうとサンプルの水分率が高くなるということがある。測定されるベクレルの数値は、分母が重量なので(Bq/kg)、乾いた砂と湿った土とを同じ土俵で比較するのはちょっと無理がある。しかし検査機関はそのへんを曖昧にしてくれるので、どういうサンプルであれ数字を出してくれるのが現状だ。
本当は、Bq/kgという数字の横に、水分率何%と併記しないと、ちゃんと比較できないんじゃないかと思う。あるいは、有機物については水分率○○%、土壌については水分率○○%で測定することとか、そういう規則をつくらないとだめなんじゃないか。とにかくいまの測定方法では、サンプル採取・作成が自由すぎて、いくらでも恣意的な数値がとれてしまう。
というわけで、いま猛烈に水分計がほしい。これがまた高いんだけどね。
追記
野菜の測定について考え方としては2つあって、一つは消費者の防護を主眼にする場合、一つは生産者の防護を主眼にする場合だ。生産者の防護は、基本的には土壌調査によっておこなうべきだろうが、それができない場合は生産物を通して間接的に調べることになる。生産者の健康被害を念頭に置くならば、できるかぎり野菜の水分を絞ってカラカラにして測定するべきだと思う。
おまけ
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