2012年4月11日水曜日

大河ドラマ 『平清盛』

ひさしぶりに海賊研究者として書くが、NHKの大河ドラマ『平清盛』である。
 年の始めはうきうきしてして見ていたが、最近はちょっとがっかりしている。
 海賊が出てこないじゃないか。
 もっと海賊を出せ。
 前回のあれはなんだ。藤原摂関家の宮廷政治? そんなものはどうだっていい。狭苦しい京都の宮廷なんか映してなにが楽しいのか。視聴者(私)が求めているのは、獰猛な海賊たちのいきいきとした姿だ。だいたい脚本がおかしい。平氏の跡目争いという問題を、兄と弟のセンチメンタルなお話にしてしまってよいのだろうか。平氏の棟梁を誰が継承するか、それは武士と海賊が口角泡を飛ばして激論する大問題であるはずだ。平氏という郎党の階級的性格を左右する殺気立った問題であるはずだ。
 そんな話は史実にない? あたりまえだ。海賊の記録なんかのこっているはずがない。だからそこはリアリズムの手法を駆使して、ちょっとした嘘を挿入すればよいのだ。リアリズムというのは、ちょっとした嘘や演出を挿入することで、視点を定め、リアリティを増幅させる方法である。そういう嘘がなければ、海賊のような潜勢力を歴史の表面に浮上させることはできっこないんだから。
 だからもう史料があるとかないとかじゃなくて、毎回毎回、海賊を出してほしい。清盛が何かを悩むときは、必ず背景が海。清盛が酒を飲むときは、必ず海賊団が登場。毎回しつこいぐらいに海賊。それぐらいやってほしい。