2023年3月4日土曜日

働かないアリの解釈について

  

 アナキスト大杉栄は、ファーブルの『昆虫記』の翻訳に力を注いだ。大杉は、アリの生態観察から集産主義や相互扶助の論理を説き、日本アナキズム思想の始祖と呼ぶべき存在となった。

 

 時代は下って現在、アリの生態研究には新たな発見が加わっている。

日本の研究者が2012年に発表した論文によると、「働きアリ」のうちの2割は、まったく働かずにブラブラしていることがわかったのだという。「働きアリ」集団には、働いているアリと働いていないアリがある。仮にこの集団から働かないアリを除外して、真の「働きアリ」集団に純化してやる。すると、このうちの2割が働かないアリになってしまうというのだ。つまり「働きアリ」集団は、常に2割の働かないアリを保持しながら、働いているというわけだ。

 

 働かないアリの存在をどのように解釈し説明するかについては、まだ定説がない。この2割の働かないアリにどのようなイメージを投影するかは、自由である。

 2割の働かないアリはたんなる怠け者だ、という解釈もありうる。

この2割は予備役であり、不測の事態に備えた補充要員であろうという解釈もある。

この2割は全体の生産力に寄生するヤクザ・棒心・寄食者であるという解釈も成り立つ。

どのような説明が正解なのかは、まだわかっていない。

 

 

 私が働かないアリに投影するイメージは、預言者・批評家としてのブラブラアリである。働かないアリは、ブラブラしながら状況を見ている。彼は働いているアリが見ていないものを見ていて、まったく違う角度から問題を眺めている。働かないアリは、働いているアリが知らないことを、知っているのだ。

 

 

 かつて、首都圏反原発連合の野間某は、だめ連のペペ長谷川を激しく攻撃し、大衆運動からの排除を試みた。

首都圏反原発連合が生まれる以前、だめ連は東京の反戦派青年のなかで敬意をもって迎えられる存在であった。まさに働きアリ集団が保持する2割、ブラブラアリの代表的存在が、だめ連のペペ長谷川だった。私たちはみな、ペペ長谷川が怠け者の役立たずであることを知っていた。その上で彼を愛し、議論を交わし、ときに助言をもとめていた。有名な大学教授の講演よりも、喫煙所で交わすペペ長谷川の言葉に、重きを置いていたのだ。

 反原連の野間某がペペ長谷川を激しく攻撃したのは、たんに怠け者が目障りだということではないだろう。それだけなら、あえて攻撃する必要はない。野間が怖れたのは、怠け者に正当な地位を与えてきた運動文化、怠け者との交流を知の源泉としてきた運動文化に、強い警戒心をもったのだ。素人が陥りそうな誤りである。

 首都圏反原発連合は、2年ほどで雲散霧消してしまった。怠け者の役立たずに敬意を払わないような運動は、知的に後退し、運動の再生産に失敗したのだ。

 

教訓

 社会運動には、怠け者が必要だ。

役立たずを愛し、もっと彼の話を聞くべきだ。