2017年4月27日木曜日

ミサイルデマをやめさせよう



 「もしもミサイルが撃ち込まれたら、頑丈な建物に入り、窓から離れましょう。」
 こんなばかげた指導が公立学校で行われているらしい。
 どうやらうちの地域だけでなく、全国の小中学校で、このような指導が行われているようだ。ここで想定されているミサイルとは、朝鮮のミサイルなのだという。

 朝鮮がミサイルを撃つわけがないだろう。ありえない。完全にあさってを向いた妄想である。
 私はそれほど熱心に新聞を読んでいないし、国際面もパラパラ眺める程度なのだが、そんな私でも、朝鮮が核兵器開発に成功したらしいということは知っている。だから普通に考えて、朝鮮半島が戦争状態になることはない。冷静に客観的に考えてみればわかることだ。
 アメリカが核保有国に侵攻することができるだろうか。できない。まず中国・ロシアという二つの国連常任理事国がゆるさない。では、アメリカが国連を無視して、単独で、または有志国連合で、朝鮮に侵攻することができるだろうか。できない。中国・ロシアを敵にまわしかねないやりかたで、無謀な戦争をするわけがない。
そもそもいま朝鮮に侵攻したところで、アメリカにとって得るものはない。「国際関係のすべてをディール(取引)として考える」と公言したトランプが、得るもののない戦争をするわけがない。
 アメリカが戦争を仕掛けないなら、朝鮮は戦争をしない。戦争をしたところでなんのメリットもないからだ。朝鮮は、核兵器開発に成功したことで外交的に優位な状態を確保したのだから、いまあえて戦争をする理由がない。

 そういうわけで、朝鮮半島有事というものは、ありえない。いまありうるのは外交交渉だけなのだ。
 このことは、米軍の軍事演習や朝鮮軍の軍事演習の映像を見ればわかる。どちらも大規模な軍事演習を行っているが、軍人たちの表情は穏やかで、まったく緊迫した様子がない。朝鮮軍の指導部にいたっては、ニコニコと笑っている始末である。米軍・朝鮮軍双方とも、戦争になることはないということがわかっていて、安心して軍のデモンストレーションに興じているのである。

 朝鮮が日本に向けてミサイルを撃ちこんでくるなどという話は、万に一つもない、悪質なデマである。こんなデマを吹聴するのは、兵器産業に税金を引っ張りたい政商ぐらいなものだ。ミサイル攻撃の危機を煽って、ミサイル防衛システムを売りさばきたいのだろう。原子力発電事業で行き詰った三菱あたりが、今度は兵器産業の分野で税金にたかろうとしているわけだ。どうせそんなところだ。
そうしてまた彼らは嘘をつく。原発を売りつけるために「石油資源が枯渇する」と煽ったように。今度は、ありえないミサイル攻撃を煽って、ミサイル防衛システムなどという役に立たない高額商品を売りつけようというのだから、やり方としてはほとんど霊感商法である。ダニのような連中である。経済産業省は日本経済に寄生するダニである。こういう連中のみえすいた嘘を、ゆるしてはいけない。



 もうひとつ。

 こういう悪質なデマは、社会を侵す。社会関係を支えている人間同士の信頼が、棄損される。朝鮮がミサイルを撃ってくるというデマは、そこに含意されているのは、朝鮮国は何をするかわからない怪物のような国家であるという偏見である。
 事実はそうではない。朝鮮国は怪物の国ではない。何をするかわからない、ということはない。何をするかわからないと言うのなら、それはどんな国家にも言えることであって、朝鮮国の金正恩体制がとりたててクレイジーであるというわけではない。金正恩がどういう人間であるかはよく知らないが、少なくともトランプよりは賢明に見えるし、プーチンよりは繊細さをもった人間に見える。金正恩は誠実な人間ではないかもしれないが、少なくとも安倍晋三よりは責任感をもった人間に見える。
 朝鮮国を怪物のようにみなすことは、やめるべきである。朝鮮国は隣国であり、また、朝鮮人はずっと日本社会に暮らしてきた隣人である。仲よくしようなんてことは言わないが、偏見によって隣人を敵視することは、やめるべきだ。

 いまから約1世紀前、1923年の関東大震災後、陸軍は悪質なデマを流した。「朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」というデマである。このデマをうのみにした人間たちは、忌まわしい虐殺事件を起こしていった。殺されたのは朝鮮人だけではない。朝鮮人も日本人も「人間狩り」によって拘束され、虐殺されたのである。この虐殺事件は、東京復興事業の起点となり、「大正デモクラシー」から「昭和ファシズム」への転換点になった。この忌まわしい虐殺事件を想起しながら、現在のミサイルデマを弾劾し、やめさせよう。

くだらない与太話だといって看過してはいけない。
嘘は社会を蝕んでいく。
一人一人に語りかけ、デマをうちけしていこう。