2016年7月23日土曜日

セックススキャンダル


東京都知事選挙にはまったく関心はないのだが、鳥越候補をめぐる「セックススキャンダル」は、けっこうおもしろい。
 おもしろい、というのは、その内容ではなくて、政治的文脈である。
 政治的に左派に位置する政治家が、「セックススキャンダル」を告発され、右派が攻撃するという構図は、日本では初めてではないだろうか。日本では、セックススキャンダルを告発されるのはたいてい保守政治家である、と相場は決まっていた。
 しかし今回は違っている。左派に位置する政治家が、性的な問題で攻撃されているのだ。まるでアメリカだ。1990年代、アメリカ民主党の大統領が、ホワイトハウスで女の子といろいろやっていて、それがバレて、共和党からさんざん攻撃された、あの事件を思い出す。
日本の右翼勢力は、アメリカの宗教右翼のような性道徳主義戦略を、自家薬籠中にしたということだろうか。まあそういうことなんだろう。

 日本の宗教右翼勢力は、20年前から、性道徳の純潔主義を唱えてはいた。彼らは夫婦別姓に反対し、婚外子の権利に反対し、同性婚に反対してきた。カトリック系右翼はアメリカの宗教右翼と同様に、堕胎に反対していた。しかし、「左翼が性道徳を破壊する」という彼らの主張は、いまひとつ説得力がなかった。なぜなら、日本では左派政治家の方がピューリタン的というか品行方正で、保守政治家の方が性道徳的にだらしなかったからだ。だから宗教右翼の純潔主義は、議会外の陳情活動などで、しこしことやるしかなかったのである。
 しかしこれからは潮目が変わるかもしれない。乙武や鳥越という微妙な感じの人たちが、議会政治の表舞台に出て、宗教右翼にとってかっこうの標的になってくれたのだ。
これが、石田純一ぐらい腹が据わっていると(不倫は文化)、攻撃しづらい。
鳥越ぐらいがちょうどいいのだ。

 これはほんと微妙な感じなのだが、政治的な流れを考えれば、鳥越を全力で擁護しなくてはならないだろう。
 なぜならファシスト的な右翼運動は、小さなところから徐々に侵食していくからだ。婚外恋愛を糾弾したあとには、同性婚を糾弾し、バツイチを糾弾し、最終的には自由恋愛なんかいらないと言い出すだろう。彼ら宗教右翼のなかには、信者に集団結婚を強要するようなカルト集団も含まれているのだから。要注意だ。