2010年10月21日木曜日

尖閣諸島の何が問題か

解体する自民党の残党なのか、右翼市民運動が元気だ。まったく不愉快だ。私の行動範囲には右翼がいないので普段の生活に支障はないのだが、それでも奴らが大規模なデモをやったりしていると、そういうお寒い話題が耳に入ってきてしまう。「尖閣諸島問題で右翼が騒いでいる、こちら側の見解を出すべきではないか」とか。あーいやだいやだ。こういう幼稚な話題に引きずられるのは本当に不愉快だ。名誉のために言うが、海賊研究会では尖閣諸島うんぬんはまったく話題にものぼらない。考える価値がないから。しかしこの「問題」、どう考えたら良いかわからないという初学者のために、簡単に見取り図だけ書いておこう。

右翼の提起するところによれば、尖閣諸島問題とは国境問題である。尖閣諸島は日本領か中国領か。海賊研究の見地から言えば、これは偽の問題設定である。攻撃にさらされているのは「日本領」でも「中国領」でもなくて、その海で稼いでいる漁民である。議論されるべき問題の本質は、海上保安庁が国境管理にかこつけて漁船を拿捕したことにある。民主党前原と海上保安庁が調子に乗っている、ということだ。

順を追って説明する。
1、国家権力は万能ではない。国家はつねに妥協を強いられいて、支配できる領域と支配できない領域を抱えている。国家が支配できない領域は、大衆・民衆の組合が取り仕切っている。教育の自治(教授会や学生自治会)、労働組合、生活協同組合、商工会、入会地の管理組合などがある。これを二重権力という。
2、1970年代末から世界政策となっている新自由主義政策は、二重権力の解消を目指す。教育「改革」、労働組合つぶし、公共サービスの民営化を通じて、経済活動は金融資本による一元支配に向かう。
3、新自由主義にかぶれた政治家(民主党前原など)は、必然的に国家主義者になる。国家には手を触れてはいけない領域があることを彼らは知らないし認めない。国家による「統治」が万能であると信じている。
4、しかし彼らには残念なことに、海に縄は張れない。海は法の外にあり、なし崩しで、とりとめがない。そして海であれ陸であれ安定した入会地には、法の外の掟があり秩序がある。沖縄・台湾・中国の漁民たちが、互いを殺したり誘拐したりという話は聞かない。彼らに国境はないし「国境問題」など存在しない。海上保安庁がちょろちょろしなければ何も問題は起きなかっただろう。

結論 海上保安庁による漁船の拿捕は、中国の漁民のみならず沖縄の漁民にも緊張を強いるものだ。こんな馬鹿馬鹿しい権力発動は、誰の得にもならない。民主党前原は魚を食う資格なし、だ。