2010年11月2日火曜日

TPP 誰のための協定か

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加をめぐって、議論がまきおこっている。TPPは、アメリカ・ぺルー・チリ・シンガポール・オーストラリア・ベトナム・マレーシア・ニュージーランド・ブルネイが参加している多国間の自由貿易協定だ。2国間のFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)よりも自由化の度合いが強いものであるらしい。日本経団連・日本商工会議所・経済同友会は都内で集会を開き、TPP早期参加を訴えた。これに対して全国農業協同組合中央会は、TPP反対を表明し、大規模な全国集会を呼びかけている。
推進派の経産省は、TPP参加によって実質GDPが2.4兆〜3.5兆円押し上げられるという試算を出している。これに対して慎重派の農水省は、実質GDPがマイナス7.9兆円、さらに340万人が就業機会を失う、としている。
民主党内では意見が割れ、「みんなの党」「たちあがれ日本」が推進を表明、「日本共産党」「社民党」「国民新党」が反対を表明している。

まず注意しておくべきは、「実質GDP」というような旧い国民経済の指標は、事態を予測するのに充分ではないということだ。すでに多くの識者が指摘しているように、現代の新自由主義政策下の経済は、貧困と格差を増大させる経済である。GDPが増大したからといって、その金が我々のような貧乏人にまわってくることなどないと考えてよい。投資と貿易の自由化によって活発化するのは、銀行・金融資本の投機であって、我々の経済ではないのだ。
米国ではすでに15年以上前から自由貿易協定が推進され実施されているが、自由化(投機の自由化)によってもたらされたものは、世界規模の恐慌と、投資銀行の尻拭いのための税金投入だった。経産省がユートピアじみた試算を発表したところで、結果はもう見えていると言ってよい。

こうした前提にたってさらに注目したいのは、「みんなの党」「たちあがれ日本」そして自民・民主の新自由主義議員どもが、なんの躊躇もなく推進を表明していることである。尖閣諸島問題などで「日本の国益」を声高に叫んでいた右翼が、日本の農民の将来については、あっさりと放棄してしまうさまは、まったく愚劣というほかない。これまで「売国奴」と罵られてきた左派政党が明確に反対を表明しているのとは対照的だ。
右翼ナショナリスト・右翼ファシストがどれだけ「国民国民」と騒いでも、しょせんは金融資本の飼い犬にすぎないという、まるで歴史の教科書どおりの展開だ。こいつらの権益のために譲ってやるものなどなにひとつない。民主党は管直人を下ろすべきだ。