2016年12月23日金曜日

最後のクリスマス



 2002年に生まれた娘が、来月には15歳になる。いまは中学3年生ということで、高校受験に向けて勉強をしている。娘はいまのところ、「高校なんか行かねえよ」とは言っていないので、たぶん高校に進学するだろう。春になったら、高校生だ(予定)。

 娘にクリスマスプレゼントを贈るのは、今年が最後になる。
 我が家は敬虔なクリスチャン家庭ではない。だから、クリスマスは家族で過ごすべきだというような習慣や信条はない。娘が高校生になったら、女友達とか男友達とか同年代の人間と一緒にクリスマスを過ごしたいだろうし、また、そうするべきである。高校生になる娘が友達のパーティーの誘いを断って家族でひっそり鶏肉を食べますなんてことは、かえって不健全だ。そういう展開は、避けたい。
 というわけで、親子でケーキをつまむ“なんちゃってクリスマス”は、今年が最後になる。

 かれこれ十数年、毎年欠かさず“なんちゃってクリスマス”をやってきて、それはただ便宜的に、なんとなく流れでやってきたにすぎないものだったわけだが、しかし、これで最後となると、すこしさびしい。


 子供が大人になっていく。
 喜びとさびしさとが混合し、一体となって、感じられる。
 感情、感情の経験、感情的であることが、人間を当惑させるのは、この複雑さと奥行きのためなのだろう。このことについて、誰かが書いていたような気がする。ニーチェだったか。バタイユだったか。まあ、いい。




2016年12月22日木曜日

12・17基調講演のれじゅめ

12月17日の集会の内容は、報告集としてまとめて来年に発行します。
私が提出したれじゅめを、ちょっとだけ公開します。れじゅめに添付した統計資料などは、膨大なので、ここでは割愛します。

以下、れじゅめです。
全国各地の「放射脳」左翼のみなさんで、酒の肴にしてみてください。


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れじゅめ 「復興」政策の失敗と権力の弱体化
2016/12/17 矢部史郎

1、福島「復興」政策の諸事業

 11 「食べて応援しよう」キャンペーン 2011年~
 福島県は、小規模農家の戸数が多い農業県である。復興庁・福島県は、農産物の「風評被害払拭」のために、年間16億円の宣伝費用を投じている。このキャンペーンによって、きゅうり、トマト、ももについては、出荷額を事故前の水準に戻している。だが、農家の戸数は減少の一途をたどっている。また、首都圏の消費者意識調査では、「福島産を買わない」が30%と横ばいである。首都圏の消費者の3割は「放射脳」として定着している。

 12 除染事業 2012年~2015年 
 復興庁は、爆心地の周辺11市町村(国直轄除染)のうち、7市町村で除染事業を完了している。除染の効果は最大で45%(空間線量率)である。これはセシウム134(半減期2年)等の自然減衰分を考えれば、あまり効果があったとはいえない。除染完了後の空間線量率は、国が「公衆に許容される」としている0.23μSV/毎時の水準を達成していない。

 13 帰還事業 2014年~
 国と福島県は、県外に避難している県民を帰還させるべく、避難者の住宅補助を打ち切ろうとしている。しかし、県外への人口流出は止まらない。201611月の発表では、県人口が190万人をわった。事故後の5年間で5万人が死亡(超過)し、7万人が県外に転出(超過)している。
人口の「社会減」(転出超過)は、とくに若年者と女性に顕著である。


2、公害訴訟の動向
 福島県の被害者らは、全国20の地方裁判所・支部で、政府と東京電力にたいする損害賠償請求訴訟を提訴している。前橋地方裁判所では、裁判長の迅速な訴訟指揮によって、201610月に結審。20173月に全国で初の判決が出る予定だ。
 201611月、自民党は、東京電力事件の処理費用の試算を、あらたに21.5兆円とし、従来の試算から倍増させた。ここには損害賠償費用の増額が含まれている。
 東京電力事件は、公害事件としての性格を明確にしはじめている。
 




3、議会政治の流動化

 31自民党の分裂・弱体化
  衆院選において自民党は得票総数を減らしている。都市部の支持層が割れて「維新の会」などに流出していることと、東北地域での支持を減らし、民進党・生活の党に負けている。自民党を支えてきた小ブルジョアジー・小地主層が、ブレている。反面、政権復帰後の参院選で自民党は得票数を大きく増やしている。これは大規模な財政出動の成果であると思われる。
自公連立は継続されている。宗教勢力への依存の度合いは強まっている。

 32民主党の解党、「連合」の分裂
  2011年から2012年にかけて、民主党は分裂した。2012年の衆院選は多党乱立の選挙となり、民主党系議員の多くが落選した。さらに、原子力政策と野党共闘をめぐって「連合」が事実上の分裂をしている。これは、原子力問題によって「連合」右派の主導性が失われているためである。

 33共産党の勢力伸長
  民主党が解党したことで、共産党は「反原発派」の事実上の受け皿になった。2014年衆院選での得票数は、事故前よりも110万票増やし、21議席を獲得した。2016年の参院選では、事故前より250万票増やし、議席数を倍増させている。
 だがこの浮動票の獲得は、共産党の意図を超えたものだ。この浮動票の性格の評価をめぐって、共産党は悶絶することになる。この間の勢力伸長は、党の運動方針の成果だろうか。あるいは、野党共闘の成果だろうか。もしもそのどちらでもないとしたら、この浮動票は何か。胡乱な浮動票が増大するにしたがって、党は選挙戦における主導性を保持できなくなってしまう。


4、権威の失墜、批評の興隆
 「放射脳」の登場によって、科学行政、大学、報道機関、社会運動の権威は失墜した。
 なかでももっとも信用を失ったのは、「復興」政策に加担したNPO・市民活動である。
 NPOは、議会政治からの自立性と実践の直接性を備える疑似革命的・疑似ユートピア的性格をもって人々を動員していた。しかし、NPOが「復興」という国策に加担したことで、その化けの皮が剝がれていった。NPOは権力を批判しつつ、それ以上に権力を補完しているという事実が、明らかになった。
 権力の補完と再生産を担うNPOの枠組みが崩れることで、多くの大衆が政治的な批評性に回帰していく。この大衆の政治化という趨勢に対応して、知識人・大学人がにわかに「リベラリズム」を表明していく。2014年以後の「リベラリズム」の流行は、政治化する大衆を封じ込めようとする反動であり、NPO体制の綻びから生じた知識階層の防衛機制である。


5、「風評」の革命的性格

 51 交渉を待たない直接行動主義
 全国で展開される放射線防護活動は、予防原則に基づいて実践されてきた。それらは、議論や交渉の結果を待たず実践され、実践のあとにじっくりと結果を検証する、という形式をとる。議論し結論を出し実践する、のではなく、まず実践をしてそのあとに議論をする、という順番をとる。おそらく人々が「放射脳」に拒絶感を示すのは、この、「まず実践を先行させる」というスタイルのためだろう。また、「放射脳」とそれ以外の人々の議論がかみあわないのは、それぞれの言葉が置かれている位置の違い、実践の前に置かれているのか、実践のあとに置かれているのかという、時間的な機序が違っているからである。
 
 52 合意形成に頼らない単独行動主義
 「放射脳」は合意形成に頼らず単独で行動する。その最たるものは母子避難者である。合意に至らないのであれば、たとえ夫婦であっても別行動をとる。場合によっては離縁する。こうした実践が社会集団に与えた衝撃は大きい。社会集団や合意形成というものが個人によって簡単に崩されてしまうことが、多くの事例によって示された。この状況は、革命的であると言ってよい。

 53 言説の革命的転換
 広範にあらわれた直接行動主義と単独行動主義は、言説が立脚する新たな条件を生み出した。
 それは交渉のための言説ではなく、交渉を待たない言説である。合意や和解を目指して権力に陳情をするような「開かれた」言説ではなく、非和解的で自律した言説である。
 「放射脳」左翼の一つの任務は、こうした革命的性格をもった言説を生み出していくことである。
 目指すべき状態は、非和解的で「まったく議論にならない」者たちが誰よりも饒舌になり、建設的で「開かれた」言葉の提案者たちが沈黙すること。これまで釈明をさせられてきた者たちが沈黙し、人々に釈明を要求してきた者たちが自己弁明に追われる、という状態である。


2016年12月20日火曜日

2016年をふりかえって


 今週末に発売される『情況』誌(2016年no.3)で、「16年テーゼをめぐって」という小特集が掲載されます。この小特集は、今年の春に発表された『16年テーゼ』を題材に、有名無名の10名にコメントを寄せてもらったものです。
 編集をした私が言うと自画自賛になってしまうのですが、そういう部分を差し引いても、良い特集です。
 10名の著者はそれぞれに文体も作風も違っていて、論点にするところもまったく統一されていません。しかし、ただダラダラと感想文を集めたというのではない、緊張感があります。放射能汚染問題を正面から考えること。その被害を、他人事のように書くのではなく、被害当事者として書くこと。2011年以後に失ったものと生み出されたものを、それぞれの経験から書いていくこと。そういう困難な作業を、集団的な作業として実現できたと思います。
 『16年テーゼ』はそれ自体がユニークな提起ですが、「16年テーゼをめぐって」特集はさらにユニークで、論争的なものになっています。ぜひ買ってみてください。


 『情況』誌の特集作業と並行して、名古屋で小さな政治集会をやりました。
1217「放射脳」左翼全国集会(主催・名古屋共産主義研究会)」という集会です。愛知・京都・大阪・愛媛から参加者を集め、小規模だけれども熱い集会になりました。
 基調提起は2名。渋谷要「『16年テーゼ』の思想」、矢部史郎「「復興」政策の失敗と権力の弱体化」。その後2時間の討論と、さらに2時間の忘年会。
 年明けにはこの集会の報告集をつくります。お楽しみに。


 今年は、名古屋のグループで「16年テーゼ」を提起したり、福岡でアナキストの合宿に参加したりと、集団的な作業に時間を費やしました。
 「集団的」と言っても、大きな集団ではありません。核になるのは3人ぐらいです。私の経験から言って、3人ぐらいがちょうどいい。25年前に高円寺で活動を始めたとき、フリーターの労働組合を準備したとき、法政大学の中核派と論争したとき、在特会と対決したとき、いつもスタートは3人ぐらいでした。状況が変化するとき、新しい課題にむかって「産みの苦しみ」を担うのは、3人ぐらいの集団です。3人がしっかりとした確信をもってあたれば、新しい状況を生みだすことは可能です。
 2017年は、きっとおもしろい年になるでしょう。


2016年12月9日金曜日

被曝による都市機能災害



 東京のような巨大都市がまるごと放射能に汚染されてしまうという事態は、かつてなかった。これは人類が初めて経験するものだ。
 被曝症状によって人間の機能が低下することで、都市機能は失調をきたす。鉄道の事件・事故は、首都圏の都市機能災害を示す兆候だ。非常に興味深い。
以下、大規模掲示板「2ちゃんねる」から転載する。

1129日【情報】京成押上線・八広駅で人身事故「見ちゃいけねもの見たよ…」
1129日【情報】中央線三鷹駅で人身事故「人が轢かれた、叫び声が聞こえる飛び込み自殺
1129日【情報】京成線 菅野駅で人身事故「救急車が来てからの処理早すぎ
1128日【情報】京急線 弘明寺駅で人身事故「すごい衝突音、肉片が飛び散ってる
1128日【情報】都営新宿線 曙橋駅で人身事故「駅員にキレてるおっさんがいる
1128日【情報】小田急小田原線 足柄駅 人身事故 「目の前で人がはねられる」
1127日【情報】京成線 堀切菖蒲園駅で人身事故「車掌が、うあぁぁぁぁぁぁと叫ぶ
1126日【情報】京浜東北線 東神奈川駅で人身事故「電車に人が飛び込んだ、車掌の声が震えてる
1126日【情報】JR高崎線で人身事故 踏切内に立っていた女性、はねられ死亡/桶川
1126日【情報】高崎線 北上尾駅~桶川駅間で人身事故「轢かれた少年が線路に倒れてた
1123日【情報】東急田園都市線 用賀駅 人身事故 飛び込んだ人がはねられる
1121日【情報】西武池袋線 東久留米駅で人身事故「遺体がバラバラ」
1121日【情報】常磐線 土浦駅~神立駅間で人身事故「凄い音、何かの上を通過した」
1121日【情報】小田急小田原線 代々木八幡駅で人身事故「乗客が側面に接触し隙間に転落」
1121日【情報】京急線 京急川崎駅~八丁畷駅間で人身事故「ブルーシート広げて肉拾ってる」
1120日【情報】常磐線 柏駅で人身事故のため遅延「お客様が線路でピクピクしてる」
1119日【情報】京王井の頭線 高井戸駅で人身事故 「凄い音がした」
1118日【情報】東武東上線 朝霞台駅で人身事故「電車の下に人 うめき声が聞こえる」
1117日【情報】常磐線 綾瀬駅で人身事故「ブルーシートが生々しい」
1115日【情報】京浜東北線 急病人や荷物挟まりのフルコンボで川口駅や西川口駅がディズニー状態
1115日【情報】埼京線 板橋駅前に全裸の女性が現れて駅員が対応
1113日【情報】総武線(快速) 稲毛駅で人身事故「血の臭いが充満、足がとれた死体がある」
1112日【情報】京王高尾線 京王片倉駅で人身事故「轢かれた男性は血だらけも、自力でホームに這い上がる」
1112日【情報】横須賀線 保土ヶ谷駅で人身事故「レスキューが車両の下で救助活動してる」
1111日【情報】湘南新宿ライン 池袋駅で人身事故「女性が飛び込んで前面ガラス破損」
1110日【情報】小田急線 鶴川駅で人身事故「電車に肉片ついてる。めっちゃ叫び声が聞こえる」
1109日【情報】南武線 線路内で寝ていた人が起きてくれなかった為、電車遅延で各駅混雑
1109日【情報】常磐線 土浦駅~荒川沖駅間で特急ときわ84号が人身事故「何かにぶつかる音がした」
1109日【情報】南武線 線路内で寝ていた人が起きてくれなかった為、電車遅延で各駅混雑
1109日【情報】水戸線常磐線 土浦~荒川沖駅間での人身事故のため遅延「ときわ84号ぶつかった」
1108日【情報】新宿線・拝島は花小金井~小平駅間での人身事故の影響により、電車の運行が乱れまして
1108日【情報】また京急大師線で人身事故。 この前と同じで鈴木町と港町の間。影響で路線バスも混んでタクシー待も凄い列
1108日【情報】西武新宿線 小平駅~花小金井駅間 人身事故 踏切に入っていた人はねられる
1107日【情報】中央総武線 小岩駅 人身事故 すごい衝撃して人が何かに当たった 隣を担架が通っていった
1107日【情報】相鉄線 二俣川駅~鶴ヶ峰駅間で人身事故「物凄い音がして人を轢いた、遺体がある」
1107日【情報】小田急多摩線 黒川駅で人身事故「窓から外を覗かないでくださいとアナウンス」
1105日【情報】信越線 安中駅~磯部駅間で人身事故「めちゃくちゃすごい音した」
1105日【情報】京急線 県立大学駅で人身事故のため遅延「線路上でお客様が手を広げて立ってた」
1105日【情報】小田急線 相模大野駅で人身事故「ホームが血だらけ」電車遅延
1105日【情報】宇都宮線東大宮駅~蓮田駅間で人身事故「何かを踏んだと思ったら人だった」
1104日【情報】京急線 日ノ出町駅で人身事故「目の前に轢かれた人がいる」
1102日【情報】京成線 うすい駅~ユーカリが丘で人身事故「女性の身体の一部が切断されてる。バラバラや」
1101日【情報】JR東日本 外房線 大網~永田駅間で発生した人身事故の影響で、現在も運転を見合わせています。
1101日【情報】栗橋~新古河駅間で発生した人身事故の影響で、南栗橋~栃木駅間の運転を見合わせています。
1101日【情報】東武東上線 〔坂戸(埼玉)~池袋〕止まってる/ 下赤塚で人身事故発生運転再開不明