2012年10月1日月曜日
『ピラテ・ユトピアス』日本語版
ピーター・ランボーン・ウィルソン(a.k.a ハキム・ベイ)の『PIRATE UTOPIAS』について。
海賊研究会の菰田くんが、日本語版を完成させてしまいました。
この訳文は海賊研究会で合評・検討をしたあと、本にして出版する予定。
私はあす朝の便でニューヨークに行くので、2週間の滞在中に著者ウィルソン氏に会い、日本語版序文を依頼する予定。
東京電力のせいでずーっと先延ばしになってましたが、とうとう出ますよ。
全国の海賊研究者のみなさん、お楽しみに。
補足説明
ところでなぜ海賊なのか。
なぜこのブログは『原子力都市と海賊』なのか。
ということが自分でもよくわからなくなっていたのだが、菰田訳『PIRATE UTOPIAS』を読んで、かなり腑に落ちてきた。なんか、わかってきた。
『PIRATE UTOPIAS』で描かれている海賊伝説は、近代(近世)の地中海世界を舞台にしているのだが、ここで物語の主役をはるのは公式の世界史では描かれない人々である。ヨーロッパを追われた難民たち、にせムスリムの成り上がり、キリスト教・ユダヤ教・イスラム教それぞれから生み出された異端の宗派、千年王国思想、たんなる犯罪者、復讐者、社会の敵。この詳細な解説は翻訳者が書いてくれると思うのであまり出しゃばったことは書けないが、『PIRATE UTOPIAS』とは、彼ら歴史の泡屑となったはみ出し者たちが、どのようにして大西洋時代の思想を準備していったかという物語なのである。
私はこの一年半の間に放射能難民となり被曝者にもなったわけだが、ここで思想として問題となってくるのは、いま私が抱いている憎しみ、悲しみ、復讐心、非和解性、自由、つまり泡屑が抱くさまざまな情動が、次代の思想をしっかりと準備できるかどうかということである。だから私にとって海賊研究というのは、たんなる伝説(歴史)の問題ではなくて、現在の思想の力学に関わる実践的な問題なのである。って頭おかしいだろ。クレイジーだろ。でもきっとピーター・ランボーン・ウィルソンはわかってくれる。いい感じのハーブをまわしてくれるはずだ。