「黒ひげ危機一発」というおもちゃがある。樽に詰められた黒ひげ(海賊)に短剣を刺していくゲームだ。
短剣の差し込み口はいくつもあるが、一カ所だけ「当たり」がある。そこに刺すと、黒ひげが飛び出す。
このゲーム、最初につくられた当時と現在とではルールが違っているという。最初に売り出された当時、メーカーが設定したルールは、短剣を刺して黒ひげを飛びあがらせたら「勝ち」であった。ところが、現在ではこれが逆転して、黒ひげを飛び上がらせたら「負け」である。つまり、ロシアンルーレットと同じルールになったのだ。
なぜルールが変わってしまったかというと、たんに遊ぶ人(子供)が、そういうふうにしちゃったということらしい。遊ぶ人の多くが、ロシアンルーレット式のルールを定着させてしまったので、メーカーもしばらくしてそれに追従したのだという。
捕まえた海賊に懲罰を加えるゲームは、意外にも子供にウケなかった。一般に子供というのは、意味もなく虫を殺したりするようなサディスティックな遊びが好きであるはずなのだが、樽に押し込められた黒ひげについては、そういう感情を持たなかったようだ。かわりに、子供たちは海賊黒ひげに感情移入してしまったのだ。海賊を捕らえた側ではなく、海賊の側についたのだ。
では、なぜ子供たちは黒ひげに感情移入しちゃったのか。子供は海賊が好きなのか。子供たちにとって、眼帯をした悪党とは何か。「子供と海賊」というテーマは考えるべきことがたくさんありそうだが、このおもちゃについていえば、黒ひげというキャラに原因がありそうだ。そもそも最初のルールの設定に無理がある。黒ひげ、かわいすぎるだろう。
次回の海賊研究会は、Peter Lamborn Wilson『Pirate Utopias』の翻訳作業。
2月12日(土)15時から。カフェラバンデリアに集合。