献本をいただきました。ありがとうございます。
岩波ブックレット No.971
『経済的徴兵制をぶっ潰せ! 戦争と学生』
著=大野英士、雨宮処凛、入江公康、栗原康、白井聡、高橋若木、布施祐仁、マニュエルヤン
発行=岩波書店
このブックレット、ブックレットにしては高度な内容を含んでいて、充分な読みごたえがあります。
発言者はみなそれぞれに経験を積んできた中堅です。交わされている議論は若すぎず、古すぎず、この10年間に取り組まれてきた具体的な実践の成果を出しています。
教育政策が、労務政策と戦争政策に包摂されてしまう時代を、よく描写しています。
本書は現代の教育問題を考えるための基本文献になると思います。
さて、お礼のあいさつはここまでにして、本題。
教育政策と労務政策と戦争政策とを結びつけ、明解に表現しています。そうであるのにどこか、議論を寸止めにしているという感が、ぬぐえない。喉元まで出てきている言葉を呑み込んで、なにかに忖度している感が、あります。
「戦争と学生」、「経済的徴兵制」、いいんですよ。いいんだけれども、しかしもう一言、言わなければならないことがあったでしょう。
「放射能と学生」、でしょう。
これを言わないと。
登壇者の白井聡くんは、持ち前のコピーセンスを発揮して、「馬鹿はすぐ死ぬ」と言っています。トルストイを引用して。そのとおりです。「馬鹿」は安い愛国心にとりつかれて、真っ先に死んでしまうんです。そうやって「馬鹿な人」が無残に死んでいくのをどうやって止められるのか、考えようと、白井くんは言うわけです。まったくそのとおりです。
で、そうした構造を、いま如実に体現しているのが、学生の被曝者です。
放射線被曝に対する感受性は、若ければ若いほど強い。若者は放射線の被害を強く受けてしまう。だから、学生や若者たちはとくに放射線から防護されなくてはならない。これは2011年以降に常識となったものです。
こうした認識が一般的に共有されていながら、学生を福島に連れて行った教員がたくさんいたのです。米軍や自衛隊でも躊躇するような汚染地域に、マスクもゴーグルもなしに飛び込んでいった(飛び込まされた)学生がいたわけです。高い学費を払って、将来の展望もなく、ただ「社会活動の実績」をつくるために、「復興」ボランティアに動員された学生たちがいた。頭のいい学生は、行きません。親がしっかりしている家庭なら、行かせません。頭が弱くて、親がしっかりしていない、社会的に不利な位置におかれた学生が、福島のボランティア活動に動員されていったのです。
彼らは、現代の「入市被曝者」です。これはのちのち大問題になります。「経済的徴兵制」の残酷さは、すでに福島「復興」政策にあらわれています。
このことを言いましょう。
提案です。学生を搾取するボランティア活動を、告発し、弾劾していきましょう。