2012年3月25日日曜日

ガレキ問題の射程

今日は、「放射能防御プロジェクト・中部」の学習会に行った。
 これまで東海地域でガレキ問題に取り組んできた人たちに、いま何が問題なのかを聞くことができて、すごく勉強になった。

 愛知県の大村知事は、碧南市の処分場建設計画を変更し、知多市の埋め立て地を利用すると発表した。知多市に整備されている未利用の埋め立て地をつかって、震災ガレキの仮置き場・焼却施設・最終処分場をつくるのだという。
 この問題の謎は、費用である。あまりにも費用がかかりすぎることだ。たかだか50万トンのガレキを受け容れるために、400億円ものカネをかけて焼却施設を新設するだろうか。いまの政府がいくら「絆」が大好きだといっても、そんな道徳のために財務省がカネを出すだろうか。
 ということから考えて、問題はどうやら震災ガレキだけではない。ガレキ処分後の施設転用を考えているのではないかと思えてくる。

 問題をもう少し俯瞰してみれば、低レベル放射性廃棄物の処分問題は、震災ガレキだけでは終わらない。これからの国の施策ではさまざまな低レベル放射性廃棄物が出てくるし、最終的には原発の廃炉という問題がある。原子力産業のバックエンドは、長期間にわたって放射性廃棄物を生み出し続けるのである。その処理のための費用と労力をいかに最小限に圧縮するかということを、国も電力会社も銀行も考えているはずだ。だからこそ大村知事は、処理施設設置の「特区」を求めているのだろう。環境アセスメントもなにもなしくずしにして強行してくるはずだ。
 絆だのなんだのというきれいごとではない。
 奴らのカネのために、我々の漁場と海水浴場は汚染されるのだ。

2012年3月22日木曜日

海の調査へ

今日は愛知県の知多半島に行く。
 常滑市在住の釣り師の青年が、海洋の汚染調査をやりたいということで、彼に同行して泥とアサリを採りに行く。
 大気中を拡散したり食品流通で二次拡散した放射性物質は、川や下水処理場を通って最終的には海に流れ着く。海に堆積した放射性物質は、海草や貝類、海底魚の体内にとりこまれて生物濃縮をする。いまはまだたいした汚染はないだろうが、数年後にはえっと思うような汚染魚が登場することになるだろう。これから何年もかけて長期的にモニタリングしていかなくてはならない。市民放射能測定センターの所長がゴーサインを出してくれたので、これは測定センターの自主調査として継続的にやることになる。これからちょくちょく海に行って、泥をとったり船で魚を釣ったりすることになりそうだ。

 今日は知多半島の西側にある伊勢湾と、東側の三河湾に行く。
 数日前に愛知県知事は、震災ガレキの処分場を碧南市につくるという計画を明らかにしたが、碧南市の建設予定地も見てこようと思う。立ち入りができれば、建設前の泥を採取しておきたい。

2012年3月19日月曜日

東京からかえる

新刊『3・12の思想』の宣伝と次回作の準備のために、1週間ほど東京に行ってきた。
 二日目から花粉症の症状が治まった。三日目から体が熱くなり、じっとりと汗をかくようになった。あと、名古屋に帰ってきてから血便が出た。

 東京で何人かの知り合いと会って話し合ったが、放射線防護対策はあまり進んでいない。進んでいないどころか、いまだに福島市に向かう者もいるようだ。こういうとき、自分がはぐれ者であることを悲しいと思う。もしも私が党の中央委員会であるとか、大組合の執行部であるとか、なんらかの統制権を持っていたら、こんな無力感は味合わないだろうにと思う。
 これまで東京の運動を担ってきた優秀な活動家と優秀な知識人が、数年後には櫛の歯が抜けるようにいなくなる。突然死か、慢性的な疾患を抱えるか、うつを発症するかして、戦線は崩壊していくのだ。

 とりあえずいま私が言えるのは、福島市にのこのこ行くような人間とは今後いっさい付き合わない、ということだ。
任務意識を放棄した冒険主義は、全体を危うくする。私が統制権を持つ軍人だったら、規律違反で営倉に送るところだ。
 諸君の任務は汚染地帯に赴いて阿呆のように被曝することではない。被曝を避け、生き残り、生きて奴らにやりかえすことだ。五年後十年後の闘争を見据えて、自己を最大限に保存せよ。

おまけ

ドイツZDF フクシマのうそ 投稿者 sievert311

2012年3月8日木曜日

シーベルトについて

放射性物質による汚染を測るとき、いまは二つの単位が使われている。
 ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)だ。人体への影響を測るシーベルト(Sv)を別の単位として数えれば、正確には三つの単位があることになる。
 いま食品や土壌の測定はベクレル(Bq/kg)という単位で表現し、空間線量や被曝線量はシーベルト(Sv/h)という単位で表現している。

 しかし考えれば考えるほど、シーベルトというのは使えない単位だ。これは何かというとつまるところ熱量である。ジュールとかカロリーみたいなものだ。α線、β線、γ線、X線という種々の放射線を、全部ジュール換算にして表現するみたいな、非常に大雑把な話だ。放射線の研究というのがもともと兵器開発を中心にしているものだから、人間や鉄材をどれだけ焼くことができるかってことなんだろうが、まあ使えない。
 たとえば薬学の研究者が毒物の強さを表現するときに、熱量で表現したらおかしいだろう。このトリカブトの毒は0.001カロリーまでは健康に被害はない、とか。おいおいカロリーかよ、と。そこはグラムだろ、と。もうマンガだ。

 放射線による健康被害というのは、こういうマンガのような次元で議論されている。
 冗談ではない。
 怒りが抑えられない。